今日東京、春の風が猛烈に吹いていた。最近俺は、ちょっと元気がなかったのかもしれない。と俺は思った。渋谷駅の人ごみにまぎれながら、上京してきた時のことを思い出す。あの時から3年、東京に出てきて4年目の春、俺はあの頃の何かを忘れちゃいないだろうか?
今年の春ほど、春が重苦しく感じた事はない。いつもの春なら、誰かに恋をしながら、夏を夢見て生きていたように思う。
昼下がりの山手線。この時期、リクルートスーツがやけに目に付く。俺は今、大学4年になった。正直、一瞬戸惑ってた自分がいたんだ。電車の窓に映った自分をなめてかかった。「てめぇなんか、くそっくらえだ!あの時の瞳の輝きが今、お前にはあるのか?」そう問いかける。
3年前の春、金沢での初のワンマンライブを終え、大学も無事に決まった俺は「僕の夢は一生歌で飯を食っていくこと。」とふるさとに言葉を残し、意気揚揚、この大都会東京に上ってきた。
そして今、向かい風が吹きつつあった。少し弱気な俺は、すぐに吹き飛ばされてしまうかもしれない。目に見えない軋轢、そして目の前を通り過ぎてく不安。
最近の俺は、負けてた。逃げ道を探そうとしてた。正直に認めよう。でも今、そんな自分を恥じる。とんでもなく恥ずかしい自分だった。殴る気にもならない。
貧乏してでも、自分にケリがつくまでやり通す、あの時の覚悟が、終電まぎわの井の頭線の中、甦ってきた。
「勇気」。勇気、勇気、勇気・・・。
「勇気なくして希望なし!」そんな言葉が頭をよぎる。
俺の中でのレールは、確実に自分自身の中にあった。
最近の不安を友達に漏らした時、「お前がそんなこと言ってどうすんの?」って言われたんだ。幸せな事に、いろんな人に出会い、背中を押されながら今日まで生きてきたんだ。それを忘れてた。なんと恥ずかしい自分。
小学校5年生の正月。お年玉で買ったギターを抱えて、ただただがむしゃらに歌ってた日々。自分のことを歌で表現することを覚えた中学生。夢を朝まで語った高校時代。
「俺には歌がある。」
自分に勝つか負けるか、最後まで試してみよう。今までやったことのないことにも挑戦してみよう。どんな向かい風が吹いたとしても、立てなくなるまでやってやろう。俺自身の存在理由をかけて、勝負してみないか?
すべてが仏に見えた。
2001年4月13日
©2001 Asei
Matsuda