ダラムサラの風〜チベットによせて〜
チベットのことについて、知っているだろうか?ダライ・ラマについては?
僕がチベットに関心を持つようになたのは、ハリウッド映画「ゼブン・イヤーズ・イン・チベット」を見てからだ。そして、「クンドゥン」という映画には衝撃を受けた。
「クンドゥン」という映画は、ダライ・ラマ法王の半生を描いた作品だ。慈悲の仏・観世音菩薩の生まれ変わりとされる、ダライ・ラマ14世として即位、1949年中国共産党人民解放軍のチベット侵攻に始まるチベット侵略。そして、苦悩の末にインドに亡命する(1959年)までが、そこには描かれる。
人民解放軍のチベット侵攻が始まり、若きダライ・ラマ法王が見た、何百人もの僧侶が銃弾に倒れ、その真ん中に法王自身が立っているという夢のシーンは、今でも鮮明に目に焼き付いている。まず、民の事を想うその言葉と行動に胸打たれたものだ。
「私はただの男、仏に仕える一人の僧だ。私は水面に映る月の影。善を行ない、自己に目ざめる努力をしているものだ。」
映画で語られた、このダライ・ラマ法王の言葉に感動した。チベット独立運動の指導者として仰がれる今も、ダライ・ラマ法王は自らの事を「一介の仏教僧侶」と語っている。
ダライ・ラマ法王をはじめ、チベット人の多くが亡命してから50年近くたった今も、チベットにおける人権侵害、環境破壊は留まることを知らない。(詳しくは、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のホームページ・・・http://www.netlaputa.ne.jp/~tibet-lo/を参照していただきたい。)
チベットの現状について考える時、そして、ダライ・ラマ法王の運動を考える時、そこに21世紀のあるべき国際関係の手段があるように思う。
そこに息づくのは、徹底した「非暴力思想」であり、「平和主義」である。さらには、敵に憎悪の念を抱く事すらせず、対話を呼びかける。
20世紀後半、世界で多発した民族紛争や内戦は、憎しみが憎しみを生むという現実を作り出してしまった。そして、血は流れ、命が奪われる・・・。
昨今、「グローバリズム」という言葉が流行語のように語られる。しかしその裏側、軍事力は縮小されず、新たな悲劇を生もうとしている。
本当の意味で、「グローバリズム」の波が押し寄せるなら、世界の人々の共存を考えるなら・・・。今、ダラムサラから吹くこの平和思想の風を世界に広めたい。
ダライ・ラマ法王は、仏教者である。しかし、その行動は宗教という枠を越え、僕達に届いている。なぜなら、その願いは僕達のあたりまえの願いでもあるのだから・・・。
物事の本質は実にシンプルだと思う。ならば、そこに向かっていけばいい、それだけの話だ。困難がある?あって当然だ。大切なのは、そこに向かっていくように願う強い気持ちと、勇気。
僕は、心から尊敬の念をもってダライ・ラマ法王並びに、「Free
Tibet」、そしてダラムサラからの風を応援したい。
2001年5月16日
合掌
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尚、ダライ・ラマの平和観については、
「ダライ・ラマ平和を語る」ルイーゼ・リンザー著・中澤英雄訳(人文書院)等の文献に詳しい。
©2001 Asei Matsuda